新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で、4年ぶりの開催となった匠の祭典。
今年で第5回目となる「匠の祭典 – 技術の伝承」は、京都市右京区京北鳥居町にある「京北森林組合 木材加工センター」にて、2023年9月23日から24日の2日間にわたって行われ、数多くの方が参加されました。
匠の祭典 – 技術の伝承とは?
日本建築の伝統技術の継承、つまりは担い手の育成、ひいては京北地域の基幹産業である林業の振興を図ることを目的とした祭典で、日本古来の伝統的な木材加工技術をもつ「匠」が全国から集り、模範演技を披露・競争するイベントとなっています。
「匠の祭典」では、社寺建築などでよく使用される大工道具、鉞(まさかり)・釿(ちょうな)・槍鉋(やりがんな)・大鋸(おが)を用いて、「斫り(はつり)」「削る」「切る」技術であるハンドヒューンを実演し、一般の方にも一緒に体験してもらいます。
また、全国から集まったハンドヒューンの匠たちによる木材加工技術を競う大会も行われます。
2016年から始まった木材加工の伝統技術の継承活動は、社寺建築など伝統的な木造建築物の文化の継承と、その継承のために欠かせない伝統的加工技術の保存と向上を目指し、技術者育成に取り組んでいる鋸研ぎ名人である長津勝一氏を中心とした「伝統文化“担い”」によって行われています。
第5回 匠の祭典 – 技術の伝承
2023年9月24日土曜日(撮影日)
匠の祭典は、2日間にわたって天気に恵まれ、雨も降らず、比較的涼しい気温の中で無事に行われました。
日本ハンドヒューン協会の役員からも、「匠の祭典」のパネラーとして祭典に参加し、会場を盛り上げました。
匠による槍鉋(やりかんな)の実演
槍鉋(やりかんな)とは?
木の表面を削って滑らかにする大工道具の一つで、その起源は弥生時代にまで遡ります。最初は「かな」と呼ばれていたが、16世紀に台鉋(だいがんな)が導入されると、その外見から槍鉋と呼ばれるようになったとされています。
使い方としては、通常の鉋と同様に手前に引くようにして木を削ります。台鉋との違いは、完全に表面を平らにするのではなく、さざ波のような独特な削り痕を残すことで、模様のような装飾を施すことが出来ます。
釿(ちょうな)による名栗(ハンドヒューン表面加工)
釿(ちょうな)とは?
鍬に似た形状を持つ一種の斧で、斧の中では横斧に分類されます。鉋(かんな)が広まる以前は、世界中で木材の荒削りに使用されていたとされています。石器時代から存在していたとされる釿は、人類が発明した原初の工具「大工道具の化石」とも呼ばれています。
使い方は、直接木の上に立ったり跨いだ状態で、足元に釿を振り下ろしながら一定のリズムで削っていきます。その際に残る削り痕のパターン模様を名栗(なぐり)と呼び、木材の装飾加工のひとつとして今でも使われています。
新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で、爆発的人気となったキャンプ道具の斧、ハンマー、ナイフなどの柄(グリップ部分)にも、名栗がよく施されています。
鉞(まさかり)による丸太の斫り(ハンドヒューン)
鉞(まさかり)とは?
斧と形状が似ていますが、それよりも刃巾が広く片側がくびれているのが特徴です。用途は、丸太を角材にするため、丸太側面を荒々しく斫る(削ぎ落とす)のに用いられます。
大鋸(おが)を使った丸太の製材
大鋸(おが)とは?
室町時代初期に中国の明から伝わったとされる大きなのこぎりで、木材を縦(木目に対して平行)に挽くことができ、幅の広い薄板を切り出すことができる道具です。当初は、二人で挽く縦挽き用のものが主流でしたが、江戸時代になると一人で挽く前挽大鋸が普及しました。